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2026.03.17
【プレスリリース】気候変動緩和策が将来の飢餓リスクに与える影響を包括的に評価

気候変動の緩和策には、将来の飢餓リスクを減少させる影響と増加させる影響の両方があります。従来、減少分としては、気候変動によって生じうる作物収量の低下を回避する効果が、増加分としては、バイオエネルギー作物や植林が土地利用の競合を通じて食料生産を抑制させる効果が、それぞれ取り上げられてきました。また、増加分が減少分を上回るため、緩和策によって飢餓リスクが正味で増加すると指摘されてきました。一方で、気候変動の緩和は大気汚染を軽減させ、結果として作物収量が増えることが期待されますが、このことによる飢餓リスクの「副次的な減少分」は十分に評価されてきませんでした。東京大学、立命館大学、京都大学、国立環境研究所、株式会社イー・コンザルらによる国際共同研究チームは、6つの世界農業経済モデルを用いて、緩和策に伴う大気汚染軽減効果を考慮し、2050年までの世界の飢餓リスクへの影響を推計しました。

 

その結果、パリ協定の1.5℃目標の達成を目指して世界が緩和策を進めた場合、大気汚染を軽減することで作物収量が増える「副次的な減少分」によって、従来考えられていた2050年の世界の飢餓リスクの正味の増加を約15%(840万人)相殺させることが明らかになりました。

 

この結果は、気候変動緩和がもたらす大気汚染軽減による副次的便益を示しており、食料供給への影響の評価における、気候・土地利用・大気汚染の変化を通じた複合的な影響をとらえる必要性を示しています。しかし、気候変動緩和策によるすべての影響を考慮してもなお、世界の飢餓リスクは増加することから、緩和策の設計においては食料供給への影響を十分に配慮する必要があると言えます。

 

本研究の成果は、2026年3月16日付でSpringer Nature社から刊行される食料関連研究分野の学術誌『Nature Food』に掲載されました。

 

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Nature Food
【URL】https://www.nature.com/articles/s43016-026-01322-3
【DOI】10.1038/s43016-026-01322-3

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